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イギリスの賃貸でカビを放置できなくなる?Awaab’s Lawが民間住宅にも拡大へ

6 日前
読了時間: 8分

イギリスの賃貸住宅でよく聞く悩みの一つが、Damp(湿気)やMould(カビ)です。


「壁にカビが出てきたのでLandlordに連絡したけれど、なかなか対応してもらえない」——そんな経験がある人もいるかもしれません。


2026年10月9日、イギリス政府は、Social Housingですでに導入されているAwaab’s Law(アワーブ法)をPrivate Rented Sector(民間賃貸住宅)へ拡大するためのconsultationを開始しました。


ただし、2026年10月15日現在、Awaab’s Lawがイングランドの民間賃貸住宅ですでに全面施行されているわけではありません。


Renters’ Rights Act 2025によって民間賃貸へ制度を広げる法的な仕組みは整えられましたが、具体的な対象・調査期限・修繕期限・導入方法については、政府がconsultationを行っている段階です。


なお、今回の記事で扱う制度はEngland(イングランド)が対象です。Scotland、Wales、Northern Irelandでは住宅制度が異なります。


Social Housingとは? 日本語では「社会住宅」や「公営・社会住宅」と説明できます。Council(自治体)が所有するCouncil Housingだけでなく、Housing Associationなどが提供する住宅も含む、市場家賃より低い家賃で住宅を必要とする人へ提供される賃貸住宅の広い概念です。日本の「公営住宅」に近い役割がありますが、Council Housingだけを指す言葉ではありません。






Awaab’s Lawとは?

Awaab’s Lawは、住宅に深刻な健康・安全上の問題が見つかった場合に、Landlordが決められた期限内に調査や対応を行うことを求める制度です。


現在はイングランドのSocial Housingで施行されており、特にDamp and MouldとEmergency Hazardへの対応期限が定められています。


▶︎Social HousingはCouncil Housingだけではない

Social Housingには、Local Councilが所有するCouncil Housingだけでなく、Housing AssociationなどのRegistered Providerが提供する住宅も含まれます。今回のAwaab’s Lawは、まずこのSocial Housing分野で導入され、その仕組みを民間賃貸にも広げる方向で検討が進んでいます。



Awaab’s Lawとイギリスの賃貸住宅問題を解説するイメージ



なぜこの制度が作られた?

Awaab’s Lawという名前は、Greater ManchesterのRochdaleにあるSocial Housingで家族と暮らしていたAwaab Ishak(アワーブ・イシャク)君に由来します。


自宅では長期間にわたって深刻なカビが発生し、家族はLandlordへ問題を伝えていましたが、十分な対応が行われませんでした。Awaab君は2020年、2歳で亡くなりました。


2022年のinquestでは、長期間カビにさらされたことによる重い呼吸器疾患が死亡につながったと判断されました。この出来事をきっかけに、住宅の危険を「できるだけ早く対応する」という曖昧なルールではなく、期限を明確にした仕組みを求める動きが強まりました。


その後、Social Housing (Regulation) Act 2023を通じてAwaab’s Lawの法的基盤が整備され、2025年10月からSocial HousingでPhase 1が始まりました。





Social Housingでは現在どんなルール?

2026年10月現在、イングランドのSocial HousingではAwaab’s LawのPhase 1が施行されています。対象は、SignificantなDamp and Mouldと、すべてのEmergency Hazardです。


状況

現在の主な期限

Emergency Hazard

原則24時間以内に調査し、安全な状態にする

SignificantなDamp / Mould

10営業日以内に調査

調査後の安全確保

原則5営業日以内

調査結果の書面

原則3営業日以内

再発防止工事

原則5営業日以内に開始、または開始に向けた手続きを行う


ここでいう「5営業日以内」は、必ずしもすべての根本工事を5日で完成させるという意味ではありません。まず求められるのは、住民に危険が及ばない状態にすること(make safe)です。


再発防止の工事を5営業日以内に始めることが現実的に難しい場合でも、Landlordは工事を手配し、原則として12週間以内に実際の工事を開始する必要があります。期限内に安全な状態にできない場合には、状況に応じて一時的な住居の提供が必要になる場合もあります。


政府はSocial Housingについて、2026年11月30日からPhase 2としてExcess Cold、Excess Heat、Electrical Hazards、Fire and Explosions、Falls、Structural Collapseなどへ対象を広げる予定です。





Private Rented Sectorでは何が変わる予定?

今回のニュースで最も重要なのが、Private Rented Sector(民間賃貸住宅)への拡大です。


Renters’ Rights Act 2025によって、Awaab’s LawをPrivate Rented Sectorにも適用できる法的な枠組みが作られました。ただし、実際に民間賃貸へ適用する具体的なregulationsは、まだ確定していません。


政府は2026年10月9日から、対象となるHazard、調査期限、安全化までの期限、Emergencyの場合の対応時間、Temporary Accommodationの扱いなどについてconsultationを行っています。締切は2026年12月18日23:59です。


つまり現時点では「民間賃貸への拡大方針は決まっているが、具体的な期限・対象・開始方法はまだ決まっていない」という状況です。




イギリスのPrivate Rented Sector(民間賃貸住宅)を解説するイメージ



Damp・Mould以外には何が対象になる?

Awaab’s Lawは「カビだけの法律」ではありません。政府はPrivate Rented Sectorについて、Housing Health and Safety Rating System(HHSRS)で定められている住宅Hazardを幅広く対象にすることを検討しています。


  • Damp and Mould Growth(湿気・カビ)

  • Excess Cold / Excess Heat(過度な寒さ・暑さ)

  • Electrical Hazards(電気設備の危険)

  • Fire and Explosions(火災・爆発)

  • Structural Collapse(構造上の倒壊リスク)

  • Falls(転倒・転落)

  • Asbestos、Lead、Indoor Air Pollutants

  • Water Supply、Lighting、Noise、Entry by Intruders


政府は現在、Overcrowding(過密)を除くHHSRSのHazardを広く対象とする案について意見を求めています。ただし、これも最終決定ではありません。段階的に導入する場合には、Social Housingと同じようにDamp and MouldとEmergency Hazardから始める案も示されています。





Landlordは何日以内に対応することになる?

民間賃貸についての最終的な期限は、2026年10月15日時点ではまだ決まっていません。consultationでは複数の選択肢が示されています。


内容

検討されている期限

Significant Hazardの調査

5・10・15営業日

調査結果を書面で通知

1・3・5営業日

Hazardを安全な状態にする

3・5・10営業日

再発防止工事を始める

3・5・10営業日

Emergency Hazard

12・24・48時間


Social Housingの現行基準は、調査10営業日、安全確保5営業日、書面3営業日、Emergency 24時間です。そのため同じ数字が民間賃貸にも使われる可能性はありますが、現時点でPrivate Landlordに対する確定した法定期限ではありません。


Alternative Accommodationについても、Social Housingと同じ義務をPrivate Landlordへどのように適用するかがconsultationの論点になっています。





イギリスで賃貸に住む日本人に重要なこと

今回の制度改正で重要なのは、「カビが出たらLandlordが掃除をする」という話だけではありません。今後は、Landlordが問題の原因を調べ、一定の期限内に安全確保へ動く仕組みがより明確になる可能性があります。


DampやMouldの原因には、雨漏り、壊れた配管、Ventilationの不具合、Heating、断熱性能、建物の構造などさまざまなものがあります。単に表面のカビを拭き取るだけでは、再発することがあります。


日本からイギリスへ来て初めて賃貸に住む場合、「どこまでLandlordに言ってよいのだろう」と迷うこともあります。しかし、Damp、Mould、Heating、Electrical Safetyなどは、単なる見た目の問題ではなく住宅の安全性に関わる問題です。


異常を見つけたら、Emailや管理会社のメッセージなど、記録が残る方法で早めに連絡することが大切です。





今カビや湿気に困っている場合はどうする?

「Awaab’s Lawが民間賃貸に導入されるまで待たなければならないの?」というわけではありません。Private Rented Sectorでも、Landlordには現在すでに住宅を安全な状態に保つ義務があります。


▶︎1. LandlordまたはLetting Agentへ書面で連絡する

電話だけでなく、EmailやMessageなど記録が残る方法で報告します。発生した時期、場所、広がり方を説明し、写真や動画も保存しておきましょう。


▶︎2. カビだけでなく原因の調査を依頼する

雨漏り、配管、Ventilation、Heating、断熱など建物側の原因がないか確認してもらいます。繰り返す場合は、単に拭き取るだけで終わらせないことが重要です。


▶︎3. 対応されない場合はLocal Councilへ相談する

修繕が行われず健康や安全に問題がある場合、Local CouncilのEnvironmental Healthへ相談できます。CouncilはHHSRSを使って住宅のHazardを確認し、深刻な問題がある場合にはLandlordへ改善を求めることがあります。


▶︎4. ShelterやCitizens Adviceなどへ相談する

Damp and Mould、修繕義務、Landlordへの伝え方について第三者へ相談することもできます。Homes (Fitness for Human Habitation) Act 2018により、住宅が人が安全に暮らせる状態でない場合には法的な選択肢が生じることもあります。


修繕トラブルがあっても、自己判断で家賃の支払いを止めるのは避けた方がよいでしょう。 GOV.UKも修繕を待っている間は家賃を支払い続けるよう案内しています。





まとめ|民間賃貸ではまだ全面施行されていない

Awaab’s Lawは、Awaab Ishak君の死をきっかけに生まれた住宅安全制度です。Social Housingでは2025年10月からPhase 1が施行され、深刻なDamp and MouldやEmergency HazardについてLandlordが対応しなければならない期限が明確になりました。


そしてRenters’ Rights Act 2025によって、次のステップとしてPrivate Rented Sectorにも制度を広げる方針が決まっています。


ただし、2026年10月15日現在はconsultationの段階です。「10営業日以内に調査」「5営業日以内に安全化」「Emergencyなら24時間以内」といったSocial Housingの基準をそのまま民間賃貸にも適用するのかは、まだ確定していません。


一方で、Awaab’s Lawが民間賃貸に導入されるまでPrivate LandlordがDampやMouldを放置してよいわけではありません。現在でも、借主には安全で居住可能な住宅に暮らすための既存の権利があります。



※本記事は2026年10月15日時点の政府公表情報をもとに作成しています。Private Rented SectorへのAwaab’s Lawの具体的な適用内容・開始時期は今後変更される可能性があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。

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