2026年秋のイギリス住宅市場|今、家を買う?それとも借りる?
更新日:2 日前
イギリスで暮らしていると、一度は考える人も多いのが、「このまま家賃を払い続けるなら、家を買った方がいいのでは?」という問題です。
特にここ数年のイギリスでは家賃が大きく上昇し、「毎月これだけ払うなら住宅ローンを払った方がいいのでは」と感じる人もいるかもしれません。
一方で、2026年秋の住宅市場を見ると、住宅価格そのものは大きく上昇しているわけではなく、買い手の需要や取引も強いとは言えません。さらに住宅ローン金利は再び5%前後まで上昇しています。
つまり今のイギリスでは、「住宅購入市場は弱いのに、賃貸住宅は依然として高い」という、一見すると少し不思議な状況が続いています。
では、2026年9月現在、イギリスでは家を買うべきなのでしょうか。それとも賃貸を続けるべきなのでしょうか。今回は最新の公的統計や住宅市場データを確認しながら、日本人のイギリス生活という視点から考えてみます。
※この記事は2026年9月16日に公開されたONS「Private rent and house prices, UK: September 2026」を反映しています。住宅価格・家賃の最新値は暫定値を含み、今後改定される可能性があります。住宅ローンや住宅購入についての個別の金融アドバイスではありません。
2026年秋、イギリス住宅市場はどうなっている?
2026年秋のイギリス住宅市場を一言で表現するなら、「住宅価格は大きく崩れていないものの、買い手は慎重。一方、賃貸市場では物件不足が続いている」という状況です。
2026年9月16日公表のONS最新値では、UK平均住宅価格は2026年7月に£273,000で前年比+1.4%。UK平均家賃は2026年8月に月£1,400で前年比+3.8%です。Bank of Englandによる7月の住宅購入用Mortgage承認件数は56,100件、HMRCによる7月の季節調整済み住宅取引件数は96,710件でした。
住宅価格は上昇しているものの伸びは鈍化し、購入需要も弱い状態です。それに対して家賃は依然として前年を上回っています。この売買と賃貸の温度差こそ、2026年秋の住宅市場を理解する重要なポイントです。
参照:ONS|Private rent and house prices, UK: September 2026、Bank of England|Money and Credit - July 2026、HMRC|UK monthly property transactions commentary。
イギリスの住宅価格は上がっている?下がっている?
ONSとHM Land RegistryによるUK House Price Indexでは、2026年7月のイギリス平均住宅価格は£273,000。前年同月比では1.4%上昇しました。Englandでは平均£293,000で、前年比1.1%上昇です。
ただし重要なのは、上昇率がさらに低下していることです。UK住宅価格の前年比上昇率は2026年6月の1.5%(改定値)から、7月には1.4%へ低下しました。ONSによると、英国全体の住宅価格上昇率は3か月連続で鈍化しています。つまり「家の値段が急落している」のではなく、「価格上昇の勢いがかなり弱くなっている」と考えた方が実態に近いでしょう。
Rightmoveの2026年8月データでは、新規売出価格(asking price)は平均£364,999で前年同月より1.0%下落しています。ただしRightmoveは実際の成約価格ではなく、売主の希望価格を集計した民間企業の指数です。
家を買いたい人は減っている
住宅価格以上に注目したいのが、実際に「家を買おうとしている人」の動きです。
RICS(Royal Institution of Chartered Surveyors:英国王立チャータード・サーベイヤー協会)の2026年8月調査では、新規購入希望者の問い合わせを示す指標は-19%でした。4月の水準からは改善しているものの、まだマイナス圏です。成約件数を示す指標も-17%でした。
つまり市場は最悪期から少し持ち直しているものの、「買いたい人が一気に戻ってきた」状態ではありません。
住宅取引件数も伸びていない
HMRCによると、2026年7月のUK住宅取引件数は季節調整済みで96,710件。前月比では2%減少、前年同月比でも1%減少しています。
Bank of Englandによると、7月に承認された住宅購入用Mortgageは56,100件で、直近6か月平均の約60,800件を下回りました。住宅ローンを利用して購入する人も、まだ積極的とは言えません。
UK Financeは2026年の住宅取引を約120万2,000件と予測しており、2025年より約1%少なくなるとの見通しです。
参照:HMRC|UK monthly property transactions commentary、Bank of England|Money and Credit - July 2026、UK Finance|Mortgage Market Forecast 2026。
住宅ローン金利は再び5%前後へ
住宅購入を難しくしている最大の要因のひとつがMortgage(住宅ローン)金利です。
RightmoveがPodiumのデータを基に集計した2026年9月12日時点の平均では、2年固定が約5.19%、5年固定が約5.20%です。これは民間企業による市場データです。
頭金が少ないほど一般に金利は高くなりやすく、90%LTVでは2年固定約5.33%、5年固定約5.31%。一方、75%LTVでは2年固定約5.05%、5年固定約5.06%でした。
LTV(Loan to Value)とは、物件価格のうち何%を住宅ローンで借りるかを表す割合です。例えば£250,000の住宅に£25,000を頭金として入れ、£225,000借りればLTVは90%です。
Bank of Englandの政策金利は3.75%
2026年9月14日現在、Bank of EnglandのBank Rate(政策金利)は3.75%です。7月30日の金融政策会合では、9人の委員のうち6人が据え置きを支持し、3人が4.0%への利上げを支持しました。次回の政策金利発表は2026年9月17日です。
住宅ローン金利はBank Rateと完全に同じ動きをするわけではありません。特に固定金利Mortgageは、市場が予想する将来の金利や金融市場の調達コストにも左右されます。そのため「Bank Rateが3.75%だからMortgageも3.75%」とはなりません。
それでもイギリスの家賃は上がっている
住宅購入市場が弱いなら、「家賃も下がるのでは?」と思うかもしれません。ところが実際には逆です。
ONSによると、2026年8月のUK平均家賃は月£1,400。前年同月比で3.8%上昇しました。Englandだけでは平均£1,459で前年比4.0%上昇しています。UKの家賃上昇率は7月の3.7%から再び加速し、2025年12月以来の高い伸びとなりました。
RICSの8月調査でも、賃貸住宅を探すTenant demand(借り手需要)は+18%。一方で、新たに物件を市場へ出すLandlord instructions(貸主側供給)は-14%でした。さらに回答者の+44%が、今後3か月も家賃が上昇すると予測しています。
なぜ「家が売れないのに家賃は高い」のか

ここが2026年の住宅市場で最も分かりにくいところかもしれません。理由は、住宅購入市場と賃貸市場では、同じ住宅を扱っていても需給構造が違うからです。
住宅ローン金利が高くなると、「家を買いたいけれどMortgage返済が高すぎる」という人が購入を延期します。しかし住む家は必要です。その結果、その人たちは賃貸市場に残ります。
Mortgageが高い → 家を買う人が減る → 賃貸を続ける人が増える → 賃貸需要が下がりにくい、という流れです。
さらに、RICSでは2026年8月のLandlord instructionsが-14%。つまり借りたい人が多いのに、貸し出される家が十分増えていません。UK FinanceもBuy-to-Let市場について、税制や規制環境が新規投資を抑える要因になっているとしています。
民間不動産会社Zooplaも、2026年6月時点で賃貸住宅の供給はパンデミック前より地域によって20〜30%少ないと分析しています。Zooplaの数字は民間企業による市場分析です。
参照:RICS|UK Residential Survey August 2026、UK Finance|Mortgage Market Forecast 2026、Zoopla|Rental Market Report: June 2026(民間分析)。
Yorkshire・Leedsではどうなっている?
全国平均だけを見ると、リーズで暮らす人には少し実感と違うかもしれません。実際、YorkshireやLeedsではUK全体より住宅価格が強く推移しています。
ONSのLeedsローカルページで現在確認できる最新値では、2026年6月のLeeds平均住宅価格は£249,000で、前年同月比5.9%上昇しました。Yorkshire and The Humber全体の上昇率は3.6%です。LeedsのFirst-time buyer平均価格は£217,000で、前年の£205,000から6.2%上昇しています。
一方、Leedsの平均家賃は2026年7月で£1,140/月。前年の£1,100から3.6%上昇しました。Yorkshire and The Humber全体では£822から£864となり、前年比5.0%上昇です。
Leedsの部屋数別平均家賃は、1 bedroom £779、2 bedrooms £970、3 bedrooms £1,133、4 bedrooms以上 £1,683です。
Leedsのローカル統計は全国統計より公表時期が一段遅れているため、UK全体の9月最新値と直接同月比較はできません。それでも、Leedsでは住宅価格・家賃とも前年を上回っており、南部より住宅価格は低い一方で家族向け物件の家賃負担は決して小さくありません。ただし住宅市場は非常にローカル性が強く、同じLeedsでも学校、駅、通勤、物件タイプなどによって価格動向は大きく変わります。
※2026年9月16日時点で、ONSのLeedsローカルページは8月19日更新の数値(住宅価格は2026年6月、家賃は7月)を掲載しているため、このセクションでは確認できる最新のローカル値を使用しています。
今後、住宅価格と家賃はどうなる?
住宅価格について、RICSの2026年8月調査では今後3か月の見通しはまだ弱い一方、12か月先では概ね横ばいに近い見方まで改善しています。つまり「すぐ住宅価格が大きく上がる」という見方は強くありません。
民間企業Rightmoveも2026年9月に予測を下方修正し、年末のUK平均asking priceについて0〜2%程度下落する可能性を予測しています。これは売出価格に基づく民間予測です。
一方、家賃についてRICSは今後12か月でUK平均約3%上昇との予測を示しています。Zooplaも2026年の家賃上昇率を2〜3%程度と見込んでいます。少なくとも現時点では、「住宅価格は横ばい〜弱含み、家賃は緩やかな上昇」という見方が比較的多くなっています。
参照:RICS|UK Residential Survey August 2026、Rightmove|2026 UK house price predictions、Zoopla|Rental Market Report: June 2026(民間予測)
2026年秋、家を買うメリット
現在の市場は住宅購入者にとって必ずしも悪いわけではありません。住宅価格の伸びが弱く、購入希望者も少ない現在は、買い手にとって物件を比較しやすい市場になっている面があります。
Rightmoveによると、2026年夏の売却物件在庫はこの時期として12年ぶりの高水準です。売主側に競争があるため、地域によっては数年前よりも落ち着いて比較・交渉できる可能性があります。
特に5年以上住む予定がある、安定した収入がある、十分な頭金がある、緊急資金も残せる、家族構成や住む地域がある程度固まっている場合には、購入を具体的に比較する価値があります。
参照:Rightmove|House Price Index(民間企業データ)。
今は賃貸を続けるメリット
一方、「家賃が高い=必ず家を買うべき」でもありません。住宅購入にはMortgage以外にも費用があります。
Deposit(頭金)
Stamp Duty Land Tax
Solicitor / Conveyancer費用
Survey費用
Mortgage関連費用
引っ越し費用
修繕費
建物保険
Englandでは通常の住宅購入なら£125,000を超える部分からStamp Duty Land Tax(SDLT)が発生します。First-time buyerの場合は、£500,000以下の住宅であれば最初の£300,000までSDLTが0%になる特例があります。
そのため2〜3年程度でイギリスを離れる可能性が高い人の場合、購入時・売却時のコストまで考えると賃貸の方が合理的なこともあります。
また2026年5月からEnglandではRenters' Rights Actによる新制度が始まり、Section 21、いわゆるno-fault evictionが廃止されました。多くの民間賃貸契約もAssured Periodic Tenancyというローリング形式に移行しています。
「買う・借りる」は何年住むかで考える
▼長期間イギリスに住む予定
5年、10年、それ以上住む予定なら、住宅購入を比較する意味は大きくなります。短期的に住宅価格が少し下落しても、長期保有ならその影響が小さくなる可能性があります。
▼数年以内に日本へ戻る可能性がある
転勤、留学、Visa、家族事情などによって居住期間が短い場合、賃貸の柔軟性は大きなメリットです。住宅は株式のようにすぐ売れるものではありません。
▼Mortgageを多く借りる必要がある
Depositが5〜10%しか用意できない場合、現在のMortgage金利では返済負担がかなり大きくなります。反対に20〜40%程度のDepositを用意できれば、利用できる金利条件が良くなる可能性があります。
▼子どもがいる
学校、Nursery、通勤、庭、部屋数などを考えると、家族の場合は「安い家」より「長く住める場所」の重要性が高くなります。家を買うことで同じ地域に長期間住める安心感が得られる一方、転居の自由度は下がります。
▼家賃を何年払い続けることになるか
例えば月£1,200なら1年間で£14,400、5年間では単純計算で£72,000です。ただし「£72,000の家賃を払うなら£72,000損をする」という計算も正しくありません。持ち家の場合も住宅ローン利息、税金、修繕、保険、購入・売却費用などが発生するからです。
比較すべきなのは、「家賃 vs Mortgage返済額」だけではなく、5〜10年間の総コストと生活の自由度です。
まとめ|今は「買い時」ではなく「選べる市場」
2026年秋のイギリス住宅市場は、少し特殊です。住宅購入市場ではMortgage金利の高さから買い手が慎重になり、住宅取引も弱い状態が続いています。その一方、賃貸市場では借り手需要に対して貸し出される住宅が不足しており、家賃は上昇しています。
つまり「家が売れないから家賃も安くなる」わけではありません。むしろ家を買えない・買わない人が賃貸市場に残ることで、家賃を押し上げる一因になっています。
2026年秋を「絶好の買い時」「今は買わない方がいい」と決めつける必要はありません。現在は住宅価格の勢いが弱く、売却物件の選択肢も多いため、買い手側が以前より落ち着いて物件を選びやすい環境です。一方でMortgage金利は決して低くありません。
だからこそ、「来年住宅価格は上がるか、下がるか」だけではなく、これから何年間イギリスで暮らすのか、どれくらい頭金を用意できるのか、毎月いくらなら無理なく払えるのか、家族にとってどこに住むことが大切なのか、という生活そのものから考える方が良いのではないでしょうか。
家は投資商品でもありますが、その前に毎日暮らす場所です。数字を確認しながら、自分たちのこれからの生活に合う方を選んでいきたいですね。
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