イギリスの食料自給率は?イングランド農家に£233m支援|食品はどこから来る?
イギリスの食料自給率はどのくらいなのでしょうか。スーパーに行けば、季節をあまり意識しなくてもトマトやイチゴ、バナナ、リンゴなど、さまざまな食品を一年中買うことができます。
でも、よく考えてみると「この食べ物、イギリスで作られているの?」と気になることはありませんか?
2026年9月、イングランドでは農家や土地管理者を対象に、£233 million(約486億円)規模の農業支援制度の申請受付が始まりました。円換算は2026年9月30日時点の£1=約¥208.71で計算した概算です。
これはSustainable Farming Incentive(SFI)と呼ばれる制度の一部です。今回はこのニュースをきっかけに、英国の農業だけでなく、私たちがスーパーで買っている食べ物が実際にはどこから来ているのかを見てみます。

イングランドの農家に£233mの支援
英国政府は2026年9月22日、Sustainable Farming Incentive 2026(SFI26)の第2回申請枠を開始しました。用意された予算は£233 million(約486億円)です。
内訳は次の通りです。
当初予定されていた£180m(約376億円)
干ばつや生産コスト上昇の影響を受けた農家向けに追加された£50m(約104億円)
第1回申請枠で未配分だった£3m(約6.3億円)
政府は、この支援を食料生産を続けながら環境改善にも取り組む農家・土地管理者を支えるものと説明しています。特に追加の£50mは、干ばつによる低収量やコスト上昇の影響を受けた農家への支援として加えられました。
Sustainable Farming Incentiveとは?
Sustainable Farming Incentive(SFI)は簡単に言えば、農業を続けながら、土地や自然環境をより持続可能な形で管理する農家を支援する制度です。
対象となる取り組みには、たとえば次のようなものがあります。
土壌を守る
生垣(hedgerow)を管理する
水質を守る
野生動物の生息環境を維持する
農薬の使用方法を改善する
つまり「たくさん作る」だけではなく、これからも農業を続けられる土地を維持することにも公的資金が使われているということです。
イギリスの食料自給率は?英国で食べる食品の58%はUK産
では、私たちが英国で実際に食べている食品は、どこから来ているのでしょうか。Defraの2025年データでは、英国で消費される食品を農場出荷段階の価値で見ると、58%がUK産でした。EU産は23%、残り19%はEU以外の世界各地域から来ています。
生産地域 | 英国で消費される食品に占める割合 |
UK | 58% |
EU | 23% |
その他のヨーロッパ | 3% |
アフリカ | 5% |
アジア | 4% |
南アメリカ | 4% |
北アメリカ | 2% |
オーストラレーシア | 1% |
つまり、英国で食べている食品の半分以上は国内由来ですが、4割以上は海外からの供給に支えられていることになります。
なお、よく「食料自給率」と呼ばれるproduction to supply ratioは別の指標です。こちらは2025年に全食品で60%でした。Defraも、国内生産比率が100%なら食料安全保障が万全というわけではなく、安定した国内生産と複数国からの調達を組み合わせることが重要だと説明しています。
食べ物によって「国産率」はかなり違う
さらに面白いのが、食品ごとに見ると英国で生産できる割合がかなり違うことです。2025年のproduction to supply ratioでは、次のような差があります。
食品 | 2025年 |
ニンジン・カブ・スウェード | 97% |
キャベツ | 90% |
卵 | 88% |
牛肉・仔牛肉 | 84% |
鶏肉 | 80% |
ジャガイモ | 71% |
豚肉 | 67% |
イチゴ | 56% |
野菜全体 | 56% |
リンゴ | 47% |
トマト | 17% |
果物全体 | 14% |
牛乳 | 105% |
羊肉 | 103% |
100%を超える数字は「スーパーの商品がすべて英国産」という意味ではありません。この指標は国内生産量と国内供給量の関係を見るもので、輸出入も含めた市場全体の動きを表します。
卵については、英国ではBritish Lion Markが付いた商品もよく見かけます。生食や表示の違いについては、「イギリスの卵は生で食べられる?British Lion Markや注意点を解説」でも詳しく紹介しています。
なぜ果物は輸入が多い?
特に目立つのが果物です。英国のフレッシュフルーツのproduction to supply ratioは、2025年で14%でした。
ただし、これは英国の農業が果物を作れないという単純な話ではありません。Defraによると、英国が輸入する果物の約5分の4は、バナナや柑橘類など英国の気候では栽培しにくいものです。
季節も大きく関係します。英国では6月から9月頃までイチゴをかなり国内生産できますが、一年中スーパーに並べるにはシーズン外に輸入が必要です。
リンゴも同じで、英国産がある一方、Pink Ladyのように英国の気候やライセンス事情から国内生産が限られる人気品種もあります。つまり、「英国で作れるか」だけでなく、季節や消費者の選択肢も輸入量を左右するということです。
スーパーで原産国を確認してみる
スーパーで買い物をするとき、野菜や果物の袋をよく見ると「Country of Origin: United Kingdom」「Origin: Spain」「Produce of Morocco」などと書かれていることがあります。
いつも何となくカゴに入れているトマトやイチゴでも、パッケージを見ると「今日はUK産なんだ」「冬になるとスペイン産に変わっている」といった違いに気づきます。
普段使うスーパーごとの特徴や価格帯については、「【2026年版】イギリスのスーパー使い分けガイド|実体験から選ぶ特徴比較」でもまとめています。原産国表示とあわせて見ると、いつもの買い物が少し違って見えるかもしれません。
農家への支援は私たちの食卓にもつながっている
農業支援というニュースを見ると、一見すると農家だけに関係する話のように感じます。しかし、農家が作った小麦、野菜、肉、牛乳、卵などは、その後、加工・包装、流通、スーパーを通って私たちの食卓へ届きます。
英国の農業生産が弱くなれば輸入への依存度が高くなる可能性があります。一方で、輸入だけに頼れば、海外の天候、物流、国際情勢などの影響を受けやすくなります。
だからこそ、国内で安定して作れる食品を維持しながら、海外からも複数のルートで調達できる状態を保つことが食料安全保障では大切になります。£233mという政府支出のニュースも、その先をたどるとスーパーの棚につながっています。
まとめ|スーパーの棚から英国農業を見る
2026年9月、イングランドではSustainable Farming Incentiveの第2回申請枠として、£233m(約486億円)の予算が用意されました。
一方、英国で実際に消費される食品を見ると、2025年時点で58%がUK産、42%が海外由来です。さらに食品別に見ると、ニンジンやキャベツ、卵、肉、牛乳など国内生産の強い食品がある一方、トマトや果物など輸入への依存度が高い食品もあります。
英国のスーパーでは一年中たくさんの食品を買うことができますが、その背景には英国の農家と、世界各地から続くサプライチェーンの両方があります。
次にスーパーへ行ったときは、いつも買っている野菜や果物の「Country of Origin」を一度見てみるのも面白いかもしれません。普段の買い物から、英国農業が少しだけ身近に見えてきます。



コメント