イギリスの電気代、10月からVATゼロに|それでもEnergy Price Capが上がるのはなぜ?
更新日:10月7日
イギリスの電気代について、2026年10月1日からGreat Britain(England・Scotland・Wales)の家庭用電気料金にかかるVATが5%から0%になりました。
「ということは、10月から電気代が安くなる?」
と思うところですが、同じ10月1日からOfgemのEnergy Price Capは上昇。典型的な家庭の年間エネルギー料金の目安は£1,663から£1,723へ上がっています。
VATは下がったのに、Price Capは上がる。一見すると矛盾しているようですが、実際にはVAT減税と、エネルギーを供給するためのコスト上昇が同時に起きているためです。
この記事では、まず日本人には少し聞きなれないEnergy Price Capの意味から確認し、そのうえで2026年10月から何が変わったのか、VAT 0%でどれくらい負担が抑えられるのかを整理します。
※この記事で扱うPrice Capと電気VAT 0%はGreat Britainの制度です。Northern Irelandでは家庭用電気のVAT 5%が継続します。
Energy Price Capとは?
Energy Price Cap(エネルギー価格上限)は、Ofgemが設定する、Standard Variable Tariff(標準変動料金/Default Tariff)でエネルギー会社が請求できるUnit RateとStanding Chargeの上限です。
ニュースでは「Price Capは年間£1,723」と表現されますが、これは「1年間の請求額が£1,723を超えない」という意味ではありません。
£1,723は、Ofgemが想定する典型的な使用量に、その時期の平均的なUnit RateとStanding Chargeを当てはめた年間換算の目安です。実際の請求額は各家庭の使用量によって変わります。
イメージとしては、
実際の請求額 = Unit Rate × 使用量 + Standing Charge × 日数
です。つまりPrice Capは「請求総額を固定する制度」ではなく、主に料金単価を制限する仕組みです。Ofgemはこの水準を3か月ごとに見直します。
また、実際のUnit RateとStanding Chargeは地域、支払い方法、メーターの種類によって異なります。

2026年10月からイギリスの電気代は何が変わった?
2026年10月1日からは、家庭用エネルギー料金について「電気VAT 0%」と「Price Cap改定」が同時にスタートしました。
項目 | 2026年7〜9月 | 2026年10〜12月 |
電気のVAT | 5% | 0% |
ガスのVAT | 5% | 5% |
Electricity unit rate | 26.11p/kWh | 26.32p/kWh |
Electricity standing charge | 57.19p/日 | 54.83p/日 |
Gas unit rate | 7.33p/kWh | 7.97p/kWh |
Gas standing charge | 29.04p/日 | 29.68p/日 |
典型世帯のPrice Cap | £1,663 | £1,723 |
上記のUnit RateとStanding Chargeは、England・Scotland・WalesでDirect Debitを利用する場合の平均値です。
ここで注目したいのは、VATが5%から0%になっても、Electricity unit rateは26.11p/kWhから26.32p/kWhへわずかに上がっていることです。
つまりVAT 0%は「表示される電気料金をそのまま5%下げる」という単純な話ではありません。
電気料金のVATが5%から0%に
これまで家庭用の電気とガスには、通常のVAT 20%ではなくReduced Rateの5%が適用されていました。
2026年10月1日から2027年3月31日までの6か月間、Great Britainの対象となる家庭用電気についてVATが一時的に0%になります。ガスについては変更されず、引き続き5%です。
家庭側で申請する必要はなく、対象となる電気料金ではサプライヤー側で自動的に反映されます。
政府によると、この措置はOfgemの年間Price Capを約£45低く抑える効果があります。
ただし、これは全家庭に£45が現金で支給されるという意味ではありません。実際の節約額は、それぞれの電気使用量や契約内容によって変わります。

Energy Price Capは£1,723へ4%上昇
一方、Ofgemは2026年10月1日〜12月31日のEnergy Price Capを、典型的なDirect Debit世帯で年間£1,723相当としました。
直前の£1,663から、Ofgemの表現では約4%の上昇です。年間換算では£60、月あたりにすると約£5増える計算です。
Price Capの対象になるのは主にStandard Variable Tariff/Default Tariffの利用者です。Fixed Tariffを契約している場合は、このPrice Cap改定によって契約単価が自動的に上がるわけではありません。
VATゼロなのにPrice Capが上がるのはなぜ?
今回のPrice Cap上昇の中心にあるのは、卸売ガス価格(wholesale gas prices)の上昇です。
Ofgemによると、世界のガス市場の変動を受けて卸売価格が上昇し、それがガス料金を押し上げています。10月の改定では、電気料金はVAT削減によっておおむね安定する一方、ガス料金の上昇がPrice Cap全体を引き上げています。
Ofgemは、今回の改定でガス料金は約8%上昇する一方、ガスを使わない家庭では上昇率が1%未満になると説明しています。
つまり今回起きていることを単純化すると、
エネルギー供給コスト・ガス価格 ↑ - 電気VAT 5%分 = 最終的にはPrice Cap ↑
という状態です。VAT減税には確かな効果がありますが、それを上回るコスト上昇があったため、Price Capそのものは上昇しました。
VAT 0%で実際どのくらい負担が減る?
政府とOfgemはいずれも、VAT 0%によって2026年10月のPrice Capが年間約£45低くなっていると説明しています。
現在のPrice Capは£1,723なので、単純な比較ではVAT削減がなければ約£1,768相当になっていたと考えることができます。
直前の£1,663と比べると、
VAT減税あり:£1,663 → £1,723(+£60)
VAT減税がなかった場合の目安:£1,663 → 約£1,768(+約£105)
となります。
したがって政府がいう「負担軽減」は、前の四半期より請求額が下がるという意味ではなく、本来もっと大きくなるはずだった値上がりを約£45分抑えたという意味です。
なお、約£1,768は「VAT削減がなければPrice Capは約£45高かった」という公表値から計算した目安で、個々の家庭の実際の請求額を示すものではありません。
なお、約£45は年換算の目安であり、今回の6か月間で各家庭の請求額が一律に£45下がるという意味ではありません。
一般家庭への実際の影響
家庭への影響は、電気とガスをどのくらい使うかによって変わります。
▶︎電気とガスを両方使う一般的な家庭
Ofgemが示す典型世帯では、年間換算で£60、月あたり約£5の上昇です。ただしVAT 0%がなければPrice Capはさらに約£45高くなっていたとされています。
▶︎電気を多く使う家庭
オール電化住宅など、エネルギー使用のうち電気の割合が高い家庭ではVAT 0%の恩恵が相対的に大きくなります。Ofgemによると、ガスを使わない家庭では今回のPrice Cap上昇は1%未満です。
▶︎ガス暖房中心の家庭
ガスには引き続きVAT 5%がかかり、平均Gas unit rateも7.33p/kWhから7.97p/kWhへ上昇しています。秋冬にガス暖房を多く使う家庭では、「電気VATがゼロになったのに請求額が増えた」と感じる可能性があります。
イギリスの住居費全体も確認したい方は、「2026年秋のイギリス住宅市場|今、家を買う?それとも借りる?」もあわせてどうぞ。
英国の住宅制度については、「LeedsでCouncil Housingが1,000戸突破|英国の公営住宅はどういう仕組み?」でも紹介しています。
Fixed TariffやPrepayment Meterはどうなる?
Fixed Tariff(固定料金プラン)を契約している場合、今回のPrice Cap上昇によって契約したUnit Rateが自動的に上がるわけではありません。Ofgemによると、約3分の1の家庭が固定料金を利用しています。
一方、電気VAT 0%はFixed Tariffの利用者にも適用されると政府とOfgemは説明しており、サプライヤーが自動的に反映することが想定されています。
Prepayment MeterについてもPrice Capの料金設定がありますが、Direct Debitとは上限単価が異なります。自分の実際の料金を確認するときは、地域・支払い方法・メーター種類に対応したOfgemの表を見る必要があります。
まとめ|値下げではなく「値上がりを抑えた」と考える
2026年10月から、Great Britainの家庭用電気料金にかかるVATは5%から0%になりました。
しかし同じタイミングで、OfgemのEnergy Price Capは£1,663から£1,723へ上昇しています。
一見すると「VATをなくした意味がないのでは?」と思うかもしれませんが、VAT削減がなければPrice Capはさらに年間約£45高くなっていたとされています。
今回の措置は、電気代を前四半期より安くしたというより、エネルギー価格上昇による家計への影響を一部相殺したと考えるのが正確です。
そしてEnergy Price Capは年間請求額そのものの上限ではありません。自分の請求書を見るときは、£1,723という数字だけでなく、Unit Rate、Standing Charge、実際の使用量を確認しておきましょう。




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